田端駅でプシューと開いたドアの向こうから
ダイナソーJrのTシャツを着た黒髪の娘が
車内に乗り込んでくると辺りの湿気が蒸発した。
ゆっくりと座席を見渡した後、
おれの隣の空席に腰を降ろした。
シャンプーの香りが漂う。
緑色のマーク・ジェイコブスの鞄から
文庫本を取り出し読み始める。
おれは吊り広告の攻撃的な文句に目をやる。
正午近くの太陽の光が車内にくっきりとした陰影を作り
空間が現在と過去に切り分けられるように見える。
おれが向かっているのはどこなんだろうか。
隣の娘は今を生きているのだろうか。
向かいの席で携帯ゲーム機に夢中になるサラリーマンは
タイムトリップとタイムストップを使い間違えていた。
『落ちる砂と引き換えに得た記憶が
残りの時間にエッセンスを与える。』 ・・・悟りの書より
ねえ、チミたち、おれと一緒にExとGを稼ぎに行こうよ。